平成11年度第1回地域産業情報化研究会会議録(第41回)

テーマ: 「勝ち残りの必需品。電子商取引最新動向」

講師:流通科学大学 情報学部 教授 辻 新六氏


<講演内容>
EC(Electronic Commerce:電子商取引)の定義
  ECとは、「すべての経済主体が、様々なネットワークを用い、あらゆる経済活動を行うこと」と広義であるが、以下のように大きく分類される。
  • 企業内プロセス
     (生産・在庫・物流 、決済・給与管理、文書管理、研究開発など)

  • 企業間プロセス BtoB(Business to Business)
      ・特定企業間(EDI、CALS など)
      ・不特定企業間(オープンなEDI、電子公証人システムなど)

  • 企業−消費者間プロセス BtoC(Business to Customer , or Consumer)
     (バーチャルモール、ICカード など)

現在は、B to B の方が実績額は大きいが、B to C は社会としての仕組みが新しく、話題性がある


日本と米国のECの規模比較(現状と予測)
  予測は大きく差があるが、電子商取引は市場全体での比率は小さいが、額の伸びは大きい分野であることは間違いない。
(通産省の資料では以下のように予測されている)
日本
BtoC (市場比)
BtoB(市場比)
1998年
 650億円(0.02%)  8.62兆円(1.5%)
2003年
 3.16兆円(1%)  68.4兆円(11.2%)

米国
BtoC (市場比)
BtoB(市場比)
1998年
 2.25兆円(0.4%)  19.5兆円(2.5%)
2003年
 21.3兆円(3.2%)  165.3兆円(19%)

  【 B to C の現状と動向】
  • 日本のB to Cの市場規模は現状650億円で、米国市場規模の約35分の1また米国から4〜5年遅れている。

  • 日本でも2003年には、これが3兆1600億円と約50倍近く拡大し、米国に比べ市場規模で約7分の1、遅れも3年強程度にまで差が縮まる。

  • 米国は現在市場の急成長期にさしかかっている。ガーデニングショップgarden.com、書店Amazom.com、スポーツ用品など、一般、女性ユーザを対象としたバーチャルショップビジネスが台頭
    (これらは検索、Chat、メールお勧めなどコミュニティ機能が充実)

  • 日本における急成長期の入り口は、インターネットユーザー人口などユーザー側の環境が改善される2001年〜2002年頃と予測される。

  • 今後、伸びると予測されるのは金融、旅行商品、中古車関連。

  • 現状の市場規模が米国に見劣りすることに悲観せず2001年の成長期に備えて、しっかりとしたコンテンツ、インフラを整えるサプライヤー側の努力が今後ますます重要にな > る。

  【 B to C の現状と動向】
  • 米国では情報技術関連の設備投資は伸びつづけている。

  • Microsoft社 は「Windows2000」でインターネットイントラネットとパソコンデータのシームレスを進め、情報化が進展する可能性大

  • 日本のB to Bの取引規模は現状約8.6兆円で、B to Cに比べはるかに電子商取引化が進んでいる。米国との差は意外と小さく、金額で約半分弱、1年半程度の遅れである。

  • 2003年においては、日本のB to B取引規模は約68兆円と、約8倍に拡大する。米国との差も現状と同程度で推移する。

  • ただし業界構造の差により、日米で電子商取引が加速する商品セグメントは若干異なる。

    • 電子・情報関連製品、自動車・自動車部品は、世界的競争環境の激化に伴い、大手を中心に電子商取引の導入が進む

    • 運輸・物流は、各業種のサプライチェーンマネジメントの普及に伴い、電子商取引が普及する

    • 建設は、CALSの実用化に伴い、大手ゼネコンを中心に電子商取引の導入が進む

  • 日本では中小企業の情報武装が大きく遅れており、このことが社会全体の情報技術普及について足をひっぱる可能性がある。
    この克服としては情報関連スキルを必要とする業務の外注化を進めるか、中小企業経営者の世代交代まで待たねばならないかもしれない。

  • 今後は取引金額規模の多寡のみでなく、電子商取引の活用の質が問われる。中小企業を含むあらゆる取引先への拡大、各種取引情報の統合など、電子商取引を多面的に活用し、事業構造、産業構造の変革に結び付けていくことが必要である。

米国でのインターネット・ビジネス・モデルの事例
  米国では様々なインターネットビジネスの形態が現れており、以下のような成功事例がある。
バーチャル店頭(Virtual Storefront)
  実際の店と同様に実際の商品やサービスを販売。
ノンディジタルな商品・サービスについてはこれまでの方法で配送。
例:Amazon.com, Virtual Vineyards
市場情報提供者(Marketplace Concentrator)
  複数の提供者から商品・サービスの情報を収集・提供。購入予定者は情報を検索したり、店の比較、そして商品の購入をすることができる
例:Industry.net, DealerNet, InsureMarket
情報ブローカー(Information Brokers)
  商品情報、価格情報、その他の情報を提供。場合によれば購入の助けもするが、情報の提供が主たる役割。
例:Travelocity, Auto-by-Tel, PartNet
取引ブローカー(Transaction Brokers)
  バイヤーは、値段や販売期間を調べることができる。しかし主たるビジネスは取引処理を仕上げることにある。
例:Etrade, Lombard Institutional Brokerage
電子クリアリングハウス(Electronic Clearinghouses)
  価格や売買条件が刻々と変化する商品のオークションのような仲立ちをする。
例:Onsale, Internet Liquidators
ディジタル商品の配送(Digital Product Delivery)
  ソフトやマルチメディアなどを、インターネットを通して販売
例:Megasoft, Cybersource, Build-a-Card
コンテンツ・プロバイダ(Content Provider)
  コンテンツを提供することにより収入を得る。利用者が有料コンテンツにアクセスすることで収入を得たり、広告スペースの販売などから収入を得る。
例:Wall Street Journal, Interactive, QuoteCom, Catalog
オンライン・サービス・プロバイダ(Online Service Provider)
  ハードやソフトのユーザにサポートサービスを提供。
例:Cyber Media, Tune Up.com


崩壊した神話

以下の神話(予想)は違っていることが、判明してきた。

ECOM(電子商取引実証推進協議会)の挙げる神話

  1. (ビジネスサイドの)インターネットへの接続は無料
      →回線容量の増大など必要コストも増大

  2. バーチャルストアは低コストで開店・運営できる
      →コンテンツの維持・運営費用は必要

  3. スモールビジネスも大企業と互角に戦える
      →人気ページの集中(ポータル化)が進み、人気維持のための資本力が重要

  4. 広告を出す必要はない
      →ビジネスとして成立させるためにはインターネット上でも広告費が必要

BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)の挙げるEC神話

  • オンライン(インターネット)販売とオフライン(従来の)販売とは、補完的というよりも独立のものである

  • オンライン販売は、伝統的な販売を食い荒らすことによって成長する

  • オンライン販売における成長は、消費者への直接配送能力が足りないため、限定される

  • オンライン販売に適した商品とサービスは、限られたものである
      →既存の実店舗を活用したインターネット販売網の構築など、補完事例もある(アスクルなど)

  • オンライン販売はマージンを引き下げ、コモディティ化に向かう、すなわち商品・サービスの価格の低下をもたらす
      →劇的な価格低下は見当たらないし、取り扱う商品にも左右される。

  • オンライン販売は、大きな投資を必要とするが少しの収益しか見込めない

  • AOLやYahooなどのポータルがすべての価値を取ってしまうため、オンライン販売の収益性は限定される
      →同種の業界動向やサイトの構成などにも左右される。
ECの普及のためにクリアすべき課題(日本)
EC利用のための、消費者側のインフラ
  パソコン操作に代表される、情報機器スキルの不足が日本では顕著であるため、機器操作の簡易化、もしくは一般の人々の情報リテラシーの底上げが必要である。
消費者と企業を結ぶネットワークのインフラ(チャネル・インフラ)
  インターネットの家庭への拡大で通信関係支出(通信エンゲル係数)の急騰が明らかとなってきた。
一部の消費者層では、居住地の選択要因として、物理的な環境の他に、通信環境の整備(例えばCATVインターネットが可能かどうか)も重要な事項として捉えられはじめている。
今後、通信コストの低減が不可欠であるとともに、通信速度の改善も求められる。
ECを新たなビジネスのチャネルとする企業側のインフラ
  米国ではECのビジネスモデルが多く立ち上がってきており、日本でもそれに沿ったビジネスが展開されてきているが、日本の企業や消費者の特性にあった新しいビジネスモデルの試みが求められてきている。


地域とインターネット
  地域のローカル情報をインターネット上で展開している事例も増えてきている。また、主なポータルサイトには地図情報の提供がサービスとして付加され始めている。
  インターネットを情報発信ツールとして使用する時代から共通のプラットフォームという特性を活かし、ローカルコミュニティにも活用され始めている。


講演の際に紹介されたホームページ


amazon.com
http://www.amazon.com/

autobuytel.com
http://www.auto-buy-tel.com/

Firefly.com
http://www.firefly.com/GuestHome.fly

garden.com
http://www3.garden.com/index.html

購買行動とインターネット・ショッピングに関するアンケート調査結果
http://www.commerce.or.jp/enq/report/enq5/enq5_index.html

MixPizza
http://www.mixpizza.omron.co.jp/mp/svc/html.index_c

winners body
http://www.mitawards.org/winners_body.htm

Yahoo! Maps and Driving Directions
http://maps.yahoo.com/py/maps.py

yahoo.com
http://www.yahoo.com/



[トップページに戻る] [研究会の目的] [現在までの研究テーマ]
[今年度の研究テーマ・内容スケジュール] [レポート(報告書)]