平成11年度第4回地域産業情報化研究会会議録(第44回)

テーマ:『「ネット取引と日本の証券界」
       インターネット証券取引が及ぼす電子商取引と今後の展開』

講師:勧角証券株式会社 調査部長     熊井泰明氏
                営業店統括部  水口佳子氏
   

<講演内容>
インターネット時代の商取引の原則
   電子媒体による商取引が普及してくると、取引に際して付加価値を」つけることができない「単なる仲介者」は不要になってくる。消費する側は見出した価値に対価を払ことになり、自ずと「消費者が払いたいと思う価格」に収れんすることになる。
 これからは付加価値を高めるためにサービスの対象は「お客様」というマスマーケットという大きな視点で捉えるのではなく、「わたし」といった個々のワン・トゥ・ワンマーケティングが重要になってくる。

証券取引手数料の自由化
   証券業界では1975年にいち早く米国で証券業界の規制緩和が実施され、手数料が自由化された。その結果、米国と二分していた英国ロンドンの市場から、手数料の安い米国に資金が流れはじめたため、英国でも1986年に「ビッグバン」として自由化された。日本では更に後れて、今年1999年に自由化されることとなった。自由化により、競争の激化がすすみ、取引手段や、提供方法、商品構成などが顧客のニーズにしたがって多様化してきた。これら「サービス」の多様化が自由化による最大の変化である。

米国におけるインターネット証券取引の事情
   米国における最近の調査で、インターネットでの証券取引を行なっている個人投資家は全体の10%程度であることがわかった。しかし、インターネットでの証券取引取引金額に占める割合は35%となっていて、少数の個人投資家がインターネット証券取引を相当行なっている事実がある。このため店舗中心の証券会社においても、インターネットの取引割合が増加するに連れて、インターネットサービスを開始している。インターネットでの証券取引を行なっている個人投資家は、比較的「年齢が若い」「高学歴」「高収入」「高資産所有」の傾向がある。ただ、実際には取引は行なっていないが、インターネットで投資情報収集を行なう人の割合は43%となっている。その情報収集の内容については株価の推移、価格といった平凡な情報がほとんどである。

インターネット証券取引がすべてではない
 

 意外な結果であるが、「将来証券会社の店舗は不要になる」と考えている投資家は減ってきている。これは必要なファイナンシャルプランニングなどのサービスを実店舗で受けるということが見直されていることを示している。さらに将来でも「インターネットでの証券取引をしない」と考えている投資家は全体の6割にも達している。

以上のことは以下の理由によるものであると推定している。

  • 税金対策など、トータルの運用益を鑑みると、 手数料が安価であるというだけでは顧客は集まらない
  • ファイナンシャルプランニングの相談というニーズが多い
  • コンピュータシステムのダウンが予想外に多く、リスクが大きい。
日本におけるインターネット証券取引の事情
   日本ではまだインターネットの証券取引は始まったばかりであり、その取引金額も小さい。現在ではまだ、家庭におけるパソコンの普及率が33%、インターネット普及率が16%と低率であることも一因である。また、日本では1350兆円といわれている個人の金融資産の運用割合も株式が5%と、定期預金の46%に比べて大変低い事情もある。ただし、電話、テレビなど過去の他の機器、サービスの普及実績を見ても今後、インターネットが急速に普及するのは、明らかである。また、個人資産の運用も預金から投資にシフトしていくと予想され、今後インターネット証券取引の規模の拡大は見込まれる。

日本におけるインターネット証券取引は2極化
 

インターネットの証券取引の取組み姿勢は以下のように2極化している

  1. 既存の証券会社が併設するケース
     野村、大和、日興、勧角、国際、新日本、和光など→顧客へのサービスメニューの一つとして展開しており、従来と同様に店舗上でも担当者を設定している。そのための適切な手数料を設定しているため、2の顧客層と競合するものではない。

  2. ネット取引専門に設立されたケース
     マネックス、DLJディレクト、日興ビーンズ、E*トレードなど→インターネット上での取引に特化している。手数料を下げ、新規顧客を開拓して、取引高を上げるために、大きな資本力で巨大な設備投資をすすめているが、生き残り競争が激化するものと考えられる
インターネット証券取引の現状
   投資家にとって見た場合、投資手段の多様化や手数料減によるコスト削減面でのメリットが大きい、また精通した投資家にとっては、証券会社による過剰な勧誘サービス等は不要であり、その手数料削減による投資活動の活性化につながる証券会社にとっては、顧客の投資手段の多様化という面でメリットがあるが、反面、価格競争に陥りやすく、設備投資の拡充が必要になるなど厳しいものとなる技術面では、インターネット上でのセキュリティの不安などは解決可能であるが、短期間に集中的なトラフィックがサーバに集中するなど、速度面、サーバーの処理システム面でまだ不安定であるのが現状である。

勧角証券株式会社での現状の位置づけ
   インターネットの証券取引は一人一人のお客さまに、最適なサービスを提供する手段と考えている。例えば、自分で判断出来るから、手数料は安い方が良いという顧客に関しては、安い手数料とシンプルなサービスの提供手段として位置づけている。また、判断のための情報、アドバイスが欲しいと考えている顧客に関しては、適切な手数料を設定してフルライン・サービスを行なっている。この場合インターネットの証券取引は一取引手段になる。
 インターネットの証券取引はまだまだ始まったばかりであり、今後2年くらいの間に、多様なサービスメニューが各社で展開されると考えている。

その後、勧角証券ホームページhttp://www.kankaku.co.jp/においてインターネットの証券取引のデモンストレーションを実施

4.質疑応答

インターネット証券取引でトラブルはないのか?
 → 米国では多数のトラブルが発生してます。サーバがダウンして取引ができないなどは、その代表です。取引では処理スピードが要求される場合が多く、トラフィック集中によるシステムダウンは各社とも注意しています。

オンライン上で数量を間違って入力した場合はどうなるのか?
 → 間違わないように何回かの確認画面が出てきますが、それでも間違った場合はすぐに取り消し画面で取り消すか、担当の支店に電話を入れていただくことになります。

現状で、インターネット証券取引の採算性は?
 → 投資に見合った額を手数料で回収することはできていない。(多分日本ではどこも採算にのっていないと考えています)当社では先行投資として、事業を行なっています。

米国などで新しい展開はあるのでしょうか?
 → インターネット証券取引を中心に行なっている会社もファイナンシャルプランニングなどの多様なサービスを開始しています(手数料は上がります)。

以 上


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