平成11年度第5回地域産業情報化研究会会議録(第45回)

テーマ:「インターネットがビジネスを変える」

講 師:富士通(株)ネットワークサービス本部主席部長 京増弘志氏
   

<講演内容>
「インターネットは苦労なくして楽なし」
   「犬も歩けば棒にあたる」ではなく「犬は歩けばインターネットにあたる」である。 つまり犬のような感性、嗅覚がインターネットにおけるビジネスの展開に不可欠である。また、客観的にいえば、そのような感性があれば、ビジネスチャンスはいくらでも転がっている。

ニュービジネスは顧客が教えてくれる
   宅急便で有名なヤマト運輸は様々なサービスを展開してきました。まず宅配便というビジネス。百貨店の配達業務から始めた事業ですが、個々の家庭に商品を配達する際の家庭からの要望をピックアップし、宅配便需要を見出して事業展開が始まりました。その後、スキー、ゴルフ、保冷などの新サービスが現れましたが、すべて家庭からの要望をピックアップしたものです。

大量規格から個の時代へ(交通機関と情報機器)
   コンピュータ・通信の発展と交通の発展を比較すると類似点が出てくる。交通機関では航空機のような個々の点を結ぶものから、鉄道のように線を結ぶもの、さらにローカルにはバスのような面的要素のある線的移動機関がある。個人個人の要求条件を満たす手段は自家用車やバイクなどであり、面的な移動が可能な機関となっている。これらが個々の要求に沿った移動手段と位置づけられる。
 コンピュータネットワークにしても、スーパーコンピュータのように集中式のものから、ホスト、ワークステーション、パソコン、PDAというように個々の要求に応じたものが出てきている。そして個々の要求条件に適した面的な通信手段として適応しているのがインターネットである。

ポイントはコンテンツ
 

 ある会社で「インターネット研究会」という集まりを実施されていました。そこには主に役員クラスと若手社員が集まり、インターネットの利用方法、可能性などを議論されていたのですが、様々なアイデアが集まりました。何故かというと若手主体で日頃自分たちが行なっている業務をベースにして自由な議論がされたため、アイデアが多く集まったようです。従来の縦形ネットワーク(組織)では中間で情報(アイデア)が加工され、エッセンスがスポイルされてしまうのですが、ここでは面的なネットワーク(組織)が構成されていて、様々な現場のアイデアが生かされたものとなったようです。
 つまり、何が言いたいかというと、現場の要求しているものは何か、顧客のニーズは何かをつかんでいるのは、面的な広がりをもった現場であるということです。インターネットはその面的な広がりをもっているネットワークであり、個々の現場の情報を伝達するのに適した手段であるということです。
 インターネットをビジネスに活かすにはその要素が不可欠となります。個々の顧客は何が必要か、何を求めるのか等をインターネット上でどのように提供するのかが重要であります。技術はそれを実現する手段であり、このニーズをどのように提供するかというソフト的な部分(コンテンツ)が大変重要になります。

縦型と面型の組織
   企業と個人というものを比較すると、企業は縦型システムであり、計画的にものごとが実行されていきます。対して個人は自由で、たいへん無計画な行動をおこないます。
 現在、消費分野では二極分化がおこっています。つまり「個」(オリジナリティ)にこだわる商品か、薄利多売を行なう商品かに分かれてきています。このような時代にこそ、面的に広がっている現場の「個」がもっている「やる気」「情報」を上手くネットワーク化し、経営にフィードバックさせて、付加価値の高い商品を提供する仕組みが必要になります。
 従来の企業にとっては効率的であった縦型システムでは、「情報」は「点と線」を動き、その経路において「生きた情報」がスポイルされてしまう問題があるからです。

改革はトップダウンによる創造的破壊
 

 企業をこのように変革させていくには「トップダウンによる創造的破壊」がポイントになり、従来型のボトムアップ型の改革では面型ネットワーク組織にすることは困難であると考えます。その改革視点は常に「お客のお客」に注目していること(カスタマーフォーカス)が大切です
  例えば販売物流関係であれば「売り場」ではなく「買い場」の考え方が必要です。お客がどのような動きをしているか、どのようなことで困っているか(ニーズ)を捉え、提案、実行することが重要です。
  例:おむつ売場横にビールを置くと売れた←おむつを買いに来た父親が購買している。

活用事例
 
  • ミスミの例
    従来、製品の流れはメーカ→卸→店舗(顧客)であった経路を、顧客のニーズをネット上で募り、メーカとタイアップして製作するという経路に変更することで、急成長した。「買い手」が主体の代理店制度をとっている。
  • ユニフォーム店の例
    レストランにユニフォームについて顧客5000件の写真をとり、個々の事情にあわせた提案を主とした営業をおこない、更新時期をみて再営業をしている企業の実績が急激に伸びた。
  • アパレルの例(1)
    「好きな柄や写真を入れたい」といった顧客のニーズを満たすため、インターネット上でデータを送配信し、生産ラインに反映させることにより個々の柄の製品を生産する商品を開発した。
  • アパレルの例(2)
    販売動向の即時把握によって、増産などの生産発注量の調整などを即時に実施できる。
  • 日比谷花壇の例
    インターネット上のバーチャルショップを訪れる約9割が男性である。実店舗では考えられない数字である。各顧客が忘れがちな妻子の誕生日、記念日などを登録しておき、事前にメール連絡するサービスがによって実績が上がっている。

 カスタマーフォーカスを実行していくにはお客に対して「ワントゥーワンマーケティング」を取り入れることが重要です。このためには現場の情報・発想を活かすシステムが大切なのです。「アマゾン・コム」が成功したのも、個々の顧客に対しての案内メールの送付を個々の事情にあわせて選べるようにしていることが大きいと言われています。
個々の顧客の動向、嗜好などを商品提供、企画にどのように活かすかが企業戦略にとって重要な現在、インターネット上での「ワントゥーワンマーケティング」や、実際の店舗におけるナレッジをピックアップするシステムは大変重要になってきます。


企業情報システム構築の視点

 

 企業活動の上で電子商取引が注目されていますが、少し考え方の枠を広げて企業経営を支援するためのシステムを考える必要があります。企業対顧客(B to C)では商品を売る買う以外にも、顧客のニーズ情報などが得られます。このような面的な生の情報を「企画」「生産」「販売」などに活かす仕組み、そして対外的な取引(B to B)に連携して商品リードタイムを短縮する仕組み、また環境、社会支援、地域といった社会的(B to Society)にも適合・還元させる情報システムを構築していくことが重要となります。

Q&A

  • インターネット上で突然事業を開始することは困難なのだろうか?
     → 大変困難である。インターネット上でも商取引には「信頼」が重要であり、その構築には「オフライン」での信頼関係が重要である。

  • 顧客先が決まっているルートセールスのような業種についてはどのような活用法が考えられるのか?
     → 営業担当がそれぞれの顧客先での情報、ニーズなどをピックアップする   仕掛けが考えられる。これらの情報は営業先で即入力しておく方がより  「生の情報」であり、現状では埋もれてしまう場合が多い。

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