平成12年度第1回地域産業情報化研究会会議録(第47回)

テーマ: 「IT革命の現状」
人に優しい音声合成技術 IT革命の現状の1例として

講 師: 株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
        経営企画室 室長 三ツ矢英司 氏
             

<講演内容>
「ATRとは」
   電気通信分野における基礎的、独創的な研究を推進するべく、 産官学の支援を基に1986年に設立し、1989年に現在の研究所のあるけいはんな地区へ移転した研究所で、基盤技術研究促進センターが70%、民間企業が30%の出資をしている株式会社である。
時限設立された4つの研究所から構成されており、期間終了後は研究成果の利用を図るために管理会社化されている。
出資に対するリターンは研究成果を利用した製品のロイヤリティである。
今まで基礎的な研究を主としてきたが、この研究成果を一般にも普及、活用するためのカスタマイズにも取組んでいる。

IT(Information Technology:情報技術)革命とは
 

 コンピュータの中核である半導体技術、デジタル処理技術、さらにその連携を担うネットワーク技術といったデジタル技術を支える基本的なITの進歩は目を見張るものがある。さらに近年はインターネットの急速な普及と一般社会への浸透、それを取り扱う機器の価格低下が、デジタル化を推し進めてきている。
紙媒体、電話媒体等による連絡手段は特にデジタル化が進み、これに伴って企業の業務体系、流通の仕組みなど従来型の社会システムが大きく変革してきている。


ITの基本コンセプトは「One to One」である。
 

つまり「いつでもどこでも欲しいものを欲しいときに、欲しい人に」提供するための技術である。
基本的な技術(素材レベルやハードウェア、ソフトウェア)も日々進歩していくが、ビジネスチャンスといった視点で捉えると、人間が利用するにあたってのアプリケーションをどのように構築していくかが重要である。
例えば、電子商取引に関しては、認証や暗号といった技術はもちろん必要であるが、どのような仕組みで「使ってもらう」アプリケーションを提供するかが大切である。
そこには「人に優しい(わかりやすい)インターフェース」が必要である。


音声合成技術(CHATR:チャトラ)
 

  「人に優しいインターフェース」の一つとして、ATRが研究してきた音声合成技術を使った「CHATR」があります。
従来の音声合成は「あ」「か」「す」といった個別の音を基に合成する方法と、「次は」「とまります」といった単語を合成する方法がありました。

個別音の合成はどのような言葉もつなぎ合わせることができますが、抑揚、階調などが大変不自然になります。
一方、単語合成は自然なのですが、登録した単語以外の新しい言葉をつくりだすことができません。
「CHATR」はその両方をブレンドした技術で、より自然な言葉をつくりだす技術です。
まず被験者に1時間くらい自由に喋ってもらいます。これくらいで日常使用する言葉(音素)のほとんどを抽出することが出来ます。
それぞれの音素を母音、子音、音階といった面でデータベース化します。
音声合成時にはこのデータベースから、最適な音素を取り出し、合成することとなります。
「CHATR」はまだ強いアクセントやイントネーションを持つ表現が不得手ですが、定型的な文章では十分満足できるレベルに有ります。
例えば株式市況や天気予報のアナウンスは得意とする用途です。


「CHATR」を使った事業
 

 ATRではこの「CHATR」を使った事業として、天気予報の音声データ作成を行なっています。
具体的には阪急電鉄のホームページで宝塚スターが沿線主要駅の天気予報を案内するコーナーに使われています。仕組みとしてはそれぞれの気象情報を気象サービス会社よりオンラインデータで受け取り、これを原稿化して、既に登録してある宝塚スターの音声データベースと照合し、各駅の音声案内用データ作成します。これらはATRで作成します。
そして作成したデータはインターネット上で阪急電鉄のサーバに配信する仕組みと取っています。
ATRとしては音声合成処理を行なうASP(アプリケーションサービスプロバイダ)を行なっていることになります。


Q&A(意見交換)

  • ASPとしての事業性はどうなのか?  
     → 現在はまだ、多くの顧客があるわけではないが、情報技術も従来型のディスプレイを中心としたものから、音声などの媒体も使用され始めており、今後は新しい事業が展開できるものと考えている。
    音声認識技術と自動音声応答の組み合わせも事業展開の可能性があり、今後の検討テーマである。

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