平成12年度第3回地域産業情報化研究会会議録(第49回)

テーマ: 『モバイルの究極=ウェアラブルコンピュ−ティングと
「産業創造館」における産官学連携の取組み』について
     
講 師:
大阪市立大学 
工学部 電気工学科
 
教授
志水 英二 氏

<講演内容>
大阪の産業活性化
   在阪の大手企業における本社機能の東京シフトが進んでいる。経済のグローバル化が進む中で、東京に様々な情報がいち早く集まってきているため、東京シフトが進むのもやむを得ない面もある。では大阪の経済の活性化への大阪市の施策は何かというと、一つは集客都市を目指すというものである。今春開業するユニバーサルスタジオジャパンはその一つの目玉であり、2008年のオリンピック招致活動もその一環の流れである。もう一つの取り組みは中小企業とベンチャーである。それをサポートする拠点として大阪産業創造館が2000年1月末に開設した。大阪産業創造館では技術シーズを持っている大阪市立大学と中小企業、ベンチャーの産学連携を推進している。

ベンチャーについて
 

 日本経済の沈滞が指摘され始めて久しくなるが、その1つの原因に新しい企業が発生しないことも挙げられよう。企業の開業率について、日本と諸各国を比較したところ、米国の約5分の1、英国やアイスランド、アイルランドなどに比べると、約6分の1程度でしかない。開業数と廃業数についても米国は(開業数>廃業数:両方とも多い)で推移してきているが、日本ではバブル期を境に(開業数<廃業数)となってきている。
新規の開業が起きない理由の一つに、新しい技術と発想を持つ学生たちの起業意識の少なさとその起業サポートのなさを挙げることができる。
米国では起業した事業が失敗した場合においても、起業者の再挑戦は可能であり、ベンチャーキャピタルなどは起業失敗経験を一定の考え方で評価している。一方、日本では一度失敗すると次の起業が難しくなるのも特徴である。失敗が許されない環境を改善することがこれからのベンチャー支援には重要である。
大阪市立大学では、昨年より主として工学部の学生を対象として「ベンチャー技術論」を開催し、ベンチャーの成功者や失敗者、ベンチャーキャピタリストなどを講師として招いて講座を開催している。


産学官連携の嘘
 

 「今まで大学は産学連携をしていなかった」とよく言われるが、そうではない。工学部の研究者の多くは共同研究を実施している。ただ研究相手は大企業である場合がほとんどである。中小企業の場合の産学連携は問題解決型の問合せが多く、そのほとんどは大学と企業が1対1で共同研究を行うものであり、こ
の場合、大学研究者にとってあまり研究への興味心がそそられない。大学研究者にとっては研究分野の少し異なる研究者と共同で、複合型テーマを設定することが研究への興味心が涌くものといえる。大企業との共同研究はそのパターンが多く、結果として中小企業と共同研究を実施することが少なくなっている。
「大学の先生方は特許に関心がない」と言われることに関しても、決してそうではない。大阪市立大学の場合、特許をとっても市のものとなるので、研究者があえて特許をとることはない。要は研究者にとってもプラスになる特許の取り扱いをすることが重要である。近年はTLOが立ち上げられてきており、この面でも変化が起こりつつある。


産学官連携に向けて
 

 日本型の産学官連携のあり方を模索する試みとして、大阪産業創造館ではインターネットを活用した「e-liaison」と「e-solution」を実施している。
「e-liaison」では大学にある技術シーズをインターネット上で積極的に公開し、ネットワーク上多数の参加者のもとに新しい共同研究を進めていく新しいタイプの研究室である。私も「服コンピュータラボ」を開設しており、大阪大学や奈良先端大などの研究者が参加している。実際に研究室が実在するわけで はなく、ネットワーク上に開設している。利用は無料であるが、参加者にはネットワーク上での発言を義務づけている。
「e-solution」は同じくインターネット上で技術的な質問を受けつける問合せ窓口である。大阪市立大学工学部の各学科から10名程度の教員がチームを組み、問合せを閲覧し、2日以内で対応する体制としている。利用は無料である。大学側は問合せの中から新しい研究テーマを発掘できるのではないかと見ている。


ウェアラブルコンピュータ
 

  ウェアラブルコンピュータとは「着ることができる」コンピュータということであり、「服コンピュータ」である。その研究は「いたわリコンピュータ」という困ったときに助けてくれるコンピュータの研究からきている。「いたわリコンピュータ」の研究は失敗したが、技術の進展によりコンピュータはデスクトップ型からラップトップ、ノート、携帯端末へと小さくなり、服にコンピュータ機能を取り込むことが可能となった。
服コンピュータは究極のパーソナルなコンピュータであり、服を着ている人の体温、血圧といった生理情報のモニターやデータベースと連携して、着ている人の記憶支援を行ったりすることが可能である。また各種センサーで人の感知できないデータの検出も可能である。
私の研究室では現在消防服や高所作業服などの制服に対して、「服コンピュータ」を適用し、作業員の体調のモニタリングや作業指示、作業に関しての知識支援サポート、煙の多い中での生存者の探索などの機能を提供することによて、作業の安全確保をサポートする試みを行っている。



『平成12年度地域産業情報化研究会報告書(案)』について
 

 豊中商工会議所事務局長小早川氏より、平成12年度地域産業情報化研究会報告書(案)の説明を行った後、今回の研究会の内容を提出案に反映修正の上、報告書とすることに対して、出席委員の了解を得た。

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