<講演第2部>
テーマ: 「ブロードバンドによるビジネスの変化」
     
講 師:
大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門
 
  講師  野川裕記氏

(公演内容)
自己紹介と経歴について
   表の履歴書は医学部を卒業し医師免許を持つ外科医ですが、実際はLANの管理者としての裏の経歴を持っており、現職はサイバーメディアセンターの講師として大阪大学全学のネットワークの再構築を行っています。

○大阪大学のネットワーク規模
 ・ 職員5500人
 ・ 学生20000人
 ・ 面積
   豊中キャンパス 43ha
   吹田キャンパス 100ha(万博公園と同じ面積)

○サイバーメディアセンター
 平成12年に、既存の大型計算機センター、情報処理教育センター、図書館(一部)を再構成し、全学のIT化に関するすべてのことを処理する施設です。

ブロードバンドの定義
    通信速度が500Kbps以上の広帯域の通信ネットワークを指します。それと同時に重要になるのは、常時接続で、世界で一つしかないGlobal IP addressを持っているということです。

○ブロードバンド回線としては以下のようなものがあります。
  • ADSL
    通信速度は640K −> 1.5M −> 8M(bps)などがあり、現在商用として8Mbpsの物がすでに出回りはじめており、以後数年間は光ファイバーまでのつなぎとしてブロードバンド回線のメインになると考えられます。

  • CATV
    どちらかというとADSLが整備されていない地方都市でよく使われています。

  • FTTH (ファイバー・トゥ・ザ・ホーム)
    10M −> 100M
    今はまだ、都市部の一部でしか実施されていませんが、5年後にはメインの技術に成ると考えられます。

  • 無線LAN
    IWA(Fixed Wireless Access)、IEE802.11bなどの技術があり1.5Mbps程度の通信速度を実現しています。また、モスバーガーの一部の店舗で試験的に店で飲食をする顧客にLANカードを貸し出すというサービスを開始したりもしました。

ナローバンドの回線
 
  • アナログ回線
    2400 −> 9600 −> 19.2K −> 38.4K −> 56K(bps)のように容量は大きくなり、現在に至りました。

  • ISDN
    64K −> 128K(bps)で、常時接続かダイヤルアップのいずれかの形を取っています。
 いずれの場合にしろダイヤルアップであるの場合、ユーザーは時間を気にしながら使わないといけないという問題点がありました。

日本のブロードバンドの現状
 

 2001年7月31日現在、日本では約40万回線がDSLに加入していますが、韓国では350万回線が加入しており、日本の方がやや遅れているかたちになります。これは、韓国の場合、人口の殆どがソウル均衡に集中していることからADSL回線が整備しやすかったということもありますが、やはり、日本のほうがやや遅れているように思われます。

インフラへの影響
   ブロードバンド化が進むと、例えば、ISDNの加入者がADSLへ移行すると考えると、128Kbpsから、1.5Mbpsか8Mbpsにユーザーの通信速度が上がります。この場合、1ユーザーあたり最大で50倍の帯域増加が考えられます。そうなると、ISP事業者などが有するルーターやスイッチへ莫大な負担がかかるようになってしまいます。
 韓国で流行するビデオチャットやネットゲームなどが日本でも流行するようになると、ユーザーが入力した情報をWEBを介して処理するときに生じる遅れ(Jitter)を制御することが重要に成ってきます。つまり、ISP事業者にとってはリアルタイムで多人数でネットゲームを行う際にはJitterが大きな問題となること(Jitter-sensitive)からその制御が不可欠なことになってきました。
 以上のような理由により、ルーターやスイッチのベンダー企業は今までソフトで制御を行っていたような処理をハードに内在化させることにより高速化を図ろうという動きが強まりました。そこで処理チップであるASIC (Application Specific Integrated Circuit)を作成するエンジニアが重要な役割を持つようになりました。

○ Cisco VS Juniper, Cisco VS Extreme
 以上のような状況により、ルーター、スイッチの市場に変化が起こっています。以前市場の殆どを占めていたCiscoの製品が、JuniperやExtremeなどのスタートアップ企業にシェアを奪われるようになってきました。Juniperにしては設立3年のスタートアップ企業が市場の3割を奪うという快挙を成し遂げました。これは、Ciscoがソフトで行っていた処理をハードにさせることによって、処理速度をあげることによってユーザーを獲得したからであると考えられます。

セキュリティについて
    現在のPCは広帯域で常時接続になっている。これは、インターネットに裸で接続されることとなり、自分の身は自分で守らないといけない。

○セキュリティの現状

先日、新聞などを賑わしたコンピュータウイルスCode Red2の被害についての調査報告書ですが、右上の大きな赤丸をご覧下さい。被害の件数をあらわしたものですが、この赤丸の殆どが韓国での被害であると言われています。もし、日本でのADSLの加入者が対人口比で韓国と同程度になった場合、この赤丸は3倍程度になるであろうをいわれています。

○セキュリティのこれから
  • 教育
     特に日本では、常時接続の怖さを誰も教えてくれません。ISPなどの事業者は加入者を増やさないといけないので、その怖さを強調したりはしません。また、現在幼稚園から高校までの12年間、若しくは大学の4年間のいずれかでIT,インターネットに関する基本教育をやるべきであるという議論がありますが、教師となるべき人材が不足しているのは事実です。

  • Security Service Provider
     以前のように、インターネットに接続する人口が少なかった時代は、先輩から後輩へと直接教育が行われていたような感が強いですが、これほどまでにだれでも簡単に接続できる時代が訪れると、セコムのような企業がインターネット上で、Security Serviceを提供するということが必要になってくるかもしれません。

ブロードバンドでのサービス
  ○VOD(Video On Demand)
 インターネットは自分の好きなときに、必要な情報にアクセスできるという特徴から、映像や音楽などのコンテンツをユーザーにオンデマンドで配信するということが可能になってきます。その方法には以下の2つのが考えられます。

Streaming
   インターネットはそもそもQoS(Quality of Service)を保証しないため、どこで画像・音声が途切れるか予測不可能です。そのため、そのコンテンツについて課金できるのかがはなはだ疑問であるといえます。そこで考えられるのは有線放送のように、独自のインフラを持ってQoSを保障するしかないのかもしれません。
Downloading
   レンタルビデオ店のように、ダビングすると劣化するのであれば、高くてきれいなオリジナル、安くて汚いレンタル・ダビングというように差別化でき、ビジネスとして成立します。デジタルコンテンツは、コピーしても劣化しないため、著作権保護が困難です。しかし、あまりにも厳しいセキュリティを設けると、自分のダウンロードしたものであっても、他のPCに移したり、PCの部品が変わったりすると再生できないというようなことになりかねません。

おまけ
   最後におまけとして、個人的に興味があり、あったらいいと思うものを2つあげておきます。

○ホームサーバ
 50G程度のハードディスクを内蔵した家庭用のサーバーで、ADSLや無線LANに対応しており、OSはLinuxを積んだ簡単にバージョンアップできるもの。

○インターネットストレージ
 インターネット上に自分のデータを上げておき、どこからでもアクセスできるようにしてあるもの。現在、すでにいくつかのスタートアップ企業がサービスを提供していますがが、セキュリティの管理をどうするかという点で難しい部分があります。コンテンツや通信経路を暗号化するということはできますが、ストレージ会社そのものが個人情報を見ないという保障はありません。しかし、これに対する方策としては、ユーザーがコンテンツを暗号化出来れば問題ないように思われます。
そもそも、インターネットはreachabilityを保障しないため、自分の情報にアクセスできないという可能性があり、重要な情報をストレージしておくということ自身が難しいといえ、重要でない情報をストレージするというのであれば、わざわざ有料のストレージ会社と契約するというのは難しく、ビジネスとして成立させるためにはまだまだ、問題があるといえます。

おわり
   ブロードバンド=バラ色の未来ではありません。ブロードバンドでインターネットが内包する本来の問題点が表面化する可能性あります。大きな問題点としてはreachabilityは保障されないということと、QoSは保障されないがあげられます。
 ブロードバンドを元に、自分達が何を配信できるかというビジネスモデルをしっかりと考えないといけない。韓国のビデオチャットやネットゲームにしても、結局はインターネットカフェに来てくれた顧客に、サービスを提供するというビジネスモデルを取っています。これは、結局、喫茶店と同じビジネスモデルであるといえます。つまり、どこで課金するということを真剣に考えなければいけないということになります。

質疑応答:
  「有料で、メンバーのみにコンテンツを配信するサイトのビジネスモデルはどうなっていくのでしょうか?」
 配信するコンテンツによって、ブロードバンドだろうとナローバンドだろうと関係ないと思います。例えば、テキスト形式のものを配信する場合、現在の通信速度でも十分問題はありません。もちろん、ブロードバンドであるに越したことはないと思いますが。


「先生は、ADSLとFTTHのどちらが本命だと思いますか?」
 2年間ぐらいはADSLがシェアを延ばすと思いますが、4年後ぐらいにはFTTHがメインになってくるのではないかと思われます。ただし、IT業界は非常にスピードが早く、4年後というのは遠い未来であると言えるかもしれないので、断言は出来ません。



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