平成14年度第7回地域産業情報化研究会会議録(第59回)

<講演>

テーマ: 「ユビキタス最新動向」
     
講 師:
流通科学大学 情報学部 経営情報学科
教授  辻 新六 氏


(公演内容)
情報システムに対する企業や市場の変化
   まずは企業にいえることとして、ITリッチとITプアが鮮明化してきた傾向が見られる。非常に大きな情報化投資をされる方が、結局どうITを使いこなしているかがカギとなっているようだ。そして、現在まで情報化投資というものは、激しく変化する技術の進歩や価格の変動によって、5年や10年といったあるサイクルで行われてきたが、景気の影響が無きにしも非ず、企業側の情報化投資に対する動向が慎重になってきている。
 次に、少し前からあったことなのだが、企業としてシステム部門を人材も含めて持つべきかどうかが問われてきている。大手産業ではそのまま外に出して独立させ、子会社化している。例えば、松下電工のシステム部門などは、おととし独立をしてすぐ去年には株式上場を果たすといった動きをみせている。これからシステム部門は、ポストセンター的なものからベネフィット的な存在、いわゆる稼げると考えることが必要になってきている。
 次に、IT活用のスキルに対する3世代が存在してきているといえるであろう。10〜20代、30〜40代、そして50台以上とでは、あきらかにスキルが違ってきている。そして中には、趣味としてネット上で自作のソフトやゲームなどを公開するようなセミプロのような人材もいる。そういった隠れた人材をうまく活用していくかも重要になってくる。
 次に、どんどんIT関連製品の値段が安くなってきているのも事実である。もうこれ以上は無理ではないかとも思われるが、一台数万円台で売り出されると唱える人もいる。そうした時代が訪れれば、それこそユビキタス社会に行き着く片鱗ともいえるのではなかろうか。
 ここで、目を提供する側に向け見てみると、市場の大きな動きのひとつとしてアウター市場というものが出てきている。従来、ITサービス産業などが中心に行ってきたことは、基幹系システムなどを扱うことが多かったが、eビジネスというものが登場した今では、もっとこまかなユーザーのニーズにこたえられるような新しい情報システムが必要となってきている。例えば、携帯電話などとの連携やマーケティング関連のことなど、これらは従来のSEでは手を出しにくかった部分でもある。そうしたこまかくユーザーのニーズにこたえられるような情報システムがユビキタスともいえるであろう。
 そして、従来の技術を中心に解決して上質志向ないわゆるテクニカルサンもどんどん入っていき、消費者のニーズにどう解決していくかという方に動いていくソリューションビジネスへの動きも情報サービス分野でも起こっている。
 さらに、いままでにあったものの、B2BやB2Cなどもそれぞれ前年比96%増や41%増といった、不確実な数値ではあるが確実に伸びてきている。eラーニングも、著作権の問題などあるが、いまやあたりまえとなり、大学でも多く使われるようになってきている。

米国の流通業におけるIT戦略
   あまり知られてはいない分野ではあるが、ここにもウォールマートをはじめとしIT投資の流れが活発化されている。その米国食品スーパーマーケット業界のIT戦略の事例をあげてみる。

● ハナフォード・ブラザース 店舗数115
- 専用デバイスからメインフレームの在庫管理システムにアクセスして各店舗の需要にあわせて、店舗からの商品注文が行えるワイアレス・システム
● プライス・チョッパー 年商20億ドル 店舗数102
- 全店舗を対象とした商品管理システム、CRMとしてデータマイニング・ツールを利用して顧客の購買行動に即したDMの送付
● ジャイアント・イーグル 年商45億ドル 店舗数216
- 2年前から3万5000人の従業員が企業ポータル「Know Asis」から、店舗業務 のノウハウなどについてのベストプラクティスを共有。200万ドルの投資。以前は肉の切り方から商品の陳列方法まで200種類のマニュアルを作成・配布していたが、現在すべてのポータルの上に自動的にアップデート
● パスマーク 年商40億ドル 店舗数144
- データ・ウェハウス、プロキュアメント・システムなどのインフラを刷新。またPOSシステム、セルフ・チェックアウト・システムなど店内システムも入れ替え中。セルフ・チェックアウト・システムについては後に詳しく記述
● ペントラフィック 年商24億ドル 店舗数216
- 買い物サポート・プログラムとして、6店舗に印テーネットに接続されたキオスク端子を設置し、輸入食品や高級食品を中心に、店内にない商品の注文サービスを受付
● アルバートンズ 年商379億ドル 店舗数2541
- 会員カード・プログラムを拡大中。顧客データの活用により、ターゲット・マーケティングを実施
● クローガー 年商501億ドル 店舗数2392
- バイオメトリクス・ペイメント・システムの3店舗で試験運用
● アホールドUSA  年商501億ドル 店舗数2392
- 同社のストップ&ショップ・チェーンでインターネットに接続されたタブレット型ワイヤレス・デバイスを介したサービスを試験導入

【スーパーマーケットにおける新IT】
  1.Self-Checkout System:セルフ・チェックアウト・システム
 簡単に言って無人レジのことである。こうすることによって、顧客にとってレジ前の行列のいらいらを解消され、店側にとっても、人件費の削減や、日本ではあまり問題にはされていないが、海外などでは深刻な問題である従業員の不正防止など、さまざまな点で効果を発揮する。
 では具体的に、ウォールマートで実際に使われているSelf-Checkout Systemとはどのようなものなのかを説明すると、まずスクリーンにタッチすることで音声応答がなされ、買ってきた商品を自分でスキャンに通す。そこで読み込まれた情報には商品の重さの情報が入っていて、次に商品をバケツのような計量器に入れ、その重さが商品の重さの情報と一致していれば、現金やカードなどでも支払可能で、商品を受け取るというものである。この機械は1台につき約2万5千〜3万ドルであり、約15ヶ月で回収可能な計算となます。さらに4台でセットにしてビデオで監視することでセキュリティーの面でも万全な対応を取っている。

2.無線ICタグ
 これも実際にウォールマートがマサチューセッツ州の店舗で、日用雑貨のジレットと実用化実験を開始したものである。それは、店頭に使われたのではなく、物流の流れを管理するために付けた。情報の端末を持つことによって、商品一つ一つに対して情報をすぐに受け取れるため、高級アパレルなどで、その服がいつどこでどのデザイナーが作ったかという情報を顧客に提供するという付加価値として使用しているニューヨークのブランドなどもある。

非接触ICタグ
  この非接触ICタグは1つのユビキタスの動きとして注目すべきものである。この非接触ICタグとは、人やものにタグを取り付け配信の中継をするアンテナを介して、電波で非接触に人や物の個々の情報を簡単に識別(読み取り・書き込み)できるシステムが組み込まれたタグのことであり、従来この役割を果たしてきたバーコードとは書き込みができるという点で大きく異なったものである。実際に特徴を説明する。
1. バーコードとは違い、データの読み込み(read)の他に書き込み(write)もできる。このことによって、商品の物流の間で、どこから来てどこを経由してここにきたかという情報をすべて書き込むことができ、データの収集を可能にする。
2. 電波で交信するため、汚れなどによる影響を受けにくい。これは、荷物の仕分けなどで飛行機会社でも注目している。
3. 障害物を介して、データの更新が可能になる。このことによって、箱の中身にある商品の管理まですることが可能になる。
4. 複数のタグを同時にアクセスすることによりタグデータの一括読み込みが可能になり在庫の管理などもスムーズにいくようになる。
5. 個別のIDを持つことにより、一つ一つのタグが違ってくるので、識別しやすく偽造しにくくなっている。
6. バーコードより大量のデータを持つことが可能。将来的にはネットでも確認をとれるようになればかなりの応用範囲が広がるだろう。
7. 電池が不要で動作が可能。
 この非接触ICタグの需要分野はスパーでの物流管理に留まらず、多岐にわたって使用方法はあるだろう。一つ具体的な例をあげるとすれば、リサイクルの分野でも、複雑に機械が使われている自動車の中から、再利用できる部品だけを取り出すということも可能になるだろう。
 これだけ便利な非接触ICタグだがもちろん課題も多くある。
 まずはコストの問題であろう。バーコードは印刷代がほぼタダで作られるのに対し、非接触ICタグはまだ1つにつき数十円とかかってしまう。しかし、価格の問題は解決されるのも時間の問題ではないかと思われる。
 次に、技術の標準仕様が違うという点である。近年海外での物流が活発になる中、物品識別は国内だけでなく国際的な共通の方法が必要になるだろう。
 そしてもちろん技術的な課題も残されている。読み取りの際に生じるノイズへの対応や、read/writeに時間がまだまだかかること、さらにタグが重なったときの読み取りが困難であることや、液体商品による電波の乱れによる相性の悪さなどさまざまだ。
 そしてもっとも重要視される課題として、やはりセキュリティーの問題があがるだろう。多くのIT産業のなかで、セキュリティーの分野ではハッカーたちとのイタチゴッコを繰り広げている中、それが逆に大きなビジネスチャンスになることも考えられる。


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